バンドマンならこれは観ろ!

と、声を大にして言いたい映画を観た。「once ダブリンの街角で」という映画。

こんなに気持ちいい音楽映画を観たのは久しぶり。
マイ音楽映画ベスト3入り決定。(ちなみに他の二作品は、トムハンクスが初めて監督をし、ファウンテインズが有名になるキッカケとなった「すべてをあなたに」と、アメリカのインディーギターロックバンドの青春を描いた「バンドワゴン」!。ちなみにベスト3から転落してしまったのは、「バンディッツ」です。)

音楽映画の評価は(当たり前だが)楽曲で決まる、と言っても過言ではない。その点、この映画の音楽は僕的に満点。レインディアーセレクションやスノウパトロール、トラヴィスやコールドプレイの1st、ベルセバあたりが好きな人は必ずヒットすると思います。

僕が好きなシーンの一つは序盤の楽器屋さんでのセッションシーン。ストリートでギター一本で弾き語りをしていた主人公が、街で偶然出会ったヒロインであるアマチュアピアニストに自作の曲をその場で歌いながら教え、彼女が見事に(楽譜を見ながらだが、殆どアドリブで)売り物であるピアノを使ってその曲に合わせて演奏する。段々と曲が形になっていって、ヒロインがサビでハモるところは、もう鳥肌が立つほど美しい。そしてこのセッションを聴いていた楽器屋さんの店主が、思わずニヤッと笑うのが心憎い。

このシーンは全く自分の事や曲をしらない人に初めて自作の曲を聴かせ、それが他者に受け入れられた時の喜びや感動がとても自然に描かれていて、似たような体験が記憶の中にある僕は、ずっとテレビの前で「そうそう、その感じ!」と思いながら、ニヤニヤしてた。しかも相手は受け入れるどころか、素晴らしいミュージシャンで(ついでに言えば、とても魅力的な女性で)、その曲のクオリティを更に高めてくれた。素晴らしい才能の持ち主に出会った驚きと、「この人とならそれまでは出来なかった何かが、出来るんじゃないか」という希望が溢れ出した主人公の表情は、画面を観ているこっちまで幸せな気持ちにしてくれる。

もちろん、他の見所もたくさん。と言うか全部。ラストの展開も控えめで、じわっときて好きです。

何か疲れたときにたまに借りて観たい作品。色々とシビアな社会的な背景もストーリーに関与しているけれど、単純な映画だと言われれば単純な映画。でももし誰かがこの映画の悪口を言っているのを聞いたら、ファウンテインズオブウェインの傑作「ユートピアパークウェイ」の国内盤の帯に書いてあったキャッチコピーをもじった言葉をくらわせてやる。「この映画が嫌いになれる人なんて、心が石でできているに違いない」と。

いつか必ずアイルランドには行ってみたい。僕にとって陰気な空のアイルランドは憧れの土地なのです。よくグラスゴーアイルランドのバンドのCDを聴くと大概思う。必ずこの土地には何か魔力のようなものがあって、その魔力がそのバンドやアーティストのサウンドに影響を与えていると(まぁ、よく言われている事だけど)。それはもしかして、ブルースファンが「メンフィスには何かがある」と考え、憧れる感覚と似ているのかもしれない。

いつかダブリンに行こう。たとえそこが、貧富の差が激しい、薄汚くて、何もない街でも構わない。むしろ「何にもないただの陰気な街じゃん」と街角でつぶやきたいくらいだ。

何だかずいぶん青臭い気持ちで書きました。もちろん今聴いているCDは「ユートピアパークウェイ」。目指せ、坂本麻里子(笑)。

いつかサントラを買おっと。

おやすみなさい。