12月18日は新宿JAMに行こう!

先日、翌日の練習のため、島村楽器に修理に出していたテレキャスターを取りにいかねばならなかった。
僕はその日の夕方から理由の分からない苛立ちにさいなまれていて、わざわざギターを取りに行くためだけに外にでなくてはいけないという面倒が、更にこの苛立ちを加速させていた。

とはいっても翌日の練習のためにギターが必要。仕方ないので夕飯を食べ終えてから鷺宮駅に向かい僕は電車に乗った。時間は午後9時。この時間帯の上りの西武線はガラガラで、僕はシートに悠々座ることが出来た。普通なら(何が普通なのか分からんが、)その日の朝この車内にぎゅうぎゅう詰めに押し込められていた自分を思い出して、僕のストレスは緩和されてもよさそうなのだが、不運にも今回のこの苛立ちは「あの日の辛さに比べたら今の私なんて。。。」的なまやかしで緩和される事もなく、向かいの座席で不愉快な笑い声を発し続けているおばさん組が、いつからこの様な不愉快な笑い声を立てるおばさんに変わり果ててしまったのだろうか、というとてもストレスフルで悲しい疑問から逃れる事ができず、更に僕は滅入る始末。
まぁ、平たく言えば、何か調子よくなかったんですな。


西武線PEPEの島村楽器のあるフロアーに着き、奥にあるリペアカウンターに向かおうとしたら、僕の視界の右側に電子ドラムが入り込む。
この苛立ちを解消させるため、電子ドラムを叩く事を思いつく。僕は高校生の時はコピーバンドでドラムを叩いていた事があるので、それなりに基本的な事は叩ける(と思っている)。
イスに座り、スティックを持つ。スティックの太さなんて何だっていい。叩ければよい。今の気分の自分に何かを選ぶ権利や余裕などは一切ない。

まず条件反射の様に、10代の時に最も憧れていたドラマー、中村達也氏になりきり(僕はブランキーの大ファンでした)力いっぱい右手を振り下ろし、キックを入れる。ちょうど「ガソリンのゆれ方」のリズムパターンに近いものを叩く。

楽しい。さっきまでの苛立ちが少しずつ解消されているのが身をもって分かる。

これに気を良くした僕は、今まででコピーしたことのある曲(千年メダルやら、お約束のスーパーソニックやワンダーウォール等のオアシスナンバー、コールドプレイの1stの曲,レディオヘッドエアバッグ)や、気の赴くままマージービートを叩いたりする。もちろん、周りの人に何の曲を演奏しているのかなんて全く分からないのだが(スーパーソニックもイエローも同じだもね)、そんな事は気にならない。

調子に乗って、Luieのレパートリーも叩いてみる。まず、最近めっきり演奏しなくなった「Way out of Blue」にトライ。
意外と手と足がちゃんと連動し、「叩けるじゃん」と自分に驚くが(仲村さん、ごめんなさい。笑)、持続しない。イントロまでを叩けるかどうか、といったところ。
そこで比較的スロウな曲を演奏してみる。ひたすら「ECHO」のドラムパターンを叩く。これがハマル。メチャクチャ気持ちいい。フロアタムの重い音と時折入れるハイハットの音が、立体的にヘッドフォンした僕の頭の中でエンドレスで響きわたる。

それにも段々飽きてきた僕は、d.v.dのドラマーになったつもりで叩こうとするが、全く要領が掴めない。悲しくなるぐらい掴めない。そもそもd.v.dのドラムってどんなんだっけ?と考え出す始末。とりあえず、ライブで観たイトケンさんを思い描き、自由自在に叩こうとするが、完全に何がしたいのかが自分で分からなくなる。適当にタムだけを連打したり、シンバルを散らすよう鳴らしてみるが、しっくりこない。しっくりこないので、気がつくと普通にありがちなリズムパターンを叩いている。枠からはみ出せない。


そう僕はいつだって枠からはみだせない。



いつだって、ベタな事をやっている人を見るとまるで自分が勝った者のように嘲り笑うが、自分がてんで思いつかない事を見事にやっている人を見ると、まるで自己弁護をするかのように否定的になったり、滅入ってしまってその場から離れたくなる。



話しがそれた。結局イトケンさんになれなかった僕は、軌道修正し、屈強なロボットの様に叩くアートスクールの櫻井さんになりきり、ひたすら「lost in the air」を叩くも、腕力と握力が足りず、一分ぐらいでギブアップ。

電子ドラムといえば、ニューオーダー。僕はあのしゃくれた顎のドラマーになりきり、コンパクトにそしてミニマムなイメージで4つ打ちでキックを踏む。ひたすら踏む。頃合いを見計らって、裏で入るようにクローズのハイハットを入れる。その変化だけで、2分ぐらい叩く。頭の中でシンセのコードがそれに重なる。キラキラした和音。もうニューオーダーはどっかいってしまって、ドラムマシーンになっている。マシーンになったはずなのに、今日の中でもっとも生き生きした自分を感じる。それを皮肉に感じる隙はなく、クローズのハイハットをオープンに変える。どこまで行けばいい?僕達はこの列車にのって何処に向かうんだい?ロバートに僕は問いかける。
ロバートは何も言わない。こんな事になるのなら、あの留置所にいるべきだったんだ。あの冷たくて不味い飯が今では懐かしくさえ思える。僕はあのままあそこに居るべきだったんだ。そんな僕の考えを見透かしたようにロバートは言った。

「シン」
「え?」
新宿JAMさ。12月18日の木曜日さ。学生証を提示したら、300円offになるよ。」


テレキャスターは無事ナット交換を終え、僕の手元に戻ってきました。やっぱテレキャス。サイクロンもかっこいいけど、テレキャスのかっこよさには敵わない。あと上記の電子ドラムは本物のドラム以上にとても音が良い。ローランドのVドラム何とか、というやつ。お値段は何と50万。まぁ、実際のドラムの練習には電子ドラムは向かないのだろうけれど(誰でも上手く叩けているように聴こえるから)、でも楽しいものでした。


ライブ、楽しみ。僕らは19時半からの予定です。よろしく!